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2014-01-22 (Wed) 11:00

「いい人」をやめると楽になる

この前、図書館で、曽野綾子さんの著書
『「いい人」をやめると楽になる』を借りてきて読みました。

その中で、心に残る箇所が結構たくさんあったのですが、
今日はその中から、次の文章をご紹介します。

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「ほどほどの悪」と共生して生きるという認識は、
私の中で、非常に重大な意味を持つ。
もし自分の中に「ほどほどの悪」の自覚がなければ、
私は即座に人間を失うであろう。
自分がかなりの人道主義者だなどと思ったら、
そのときから、誰もが腐臭を放つようになる。

社会の中にもほどほどの悪がないところは、
むしろ巨大な腐敗に結びつく、という実例を、
今世紀の後半にも私たちは嫌というほど見せられて来た。
人民が毛沢東のおかげですべて幸せだと言い切っていた時代の中国は、
言論を弾圧し、人民の思想の自由を奪った。
日本では見られないほどの特権階級が、
人民から浮き上がった権力をほしいままにしていた。

「ほどほどの」という形容詞がつく状態ほど、
愛や許しを思わせるものはない。
ほどほどの自信、ほどほどの貧乏あるいは豊かさ、
ほどほどの挫折感、ほどほどの誠実、ほどほどの安定、ほどほどの嘘、
ほどほどの悲しみ、ほどほどの嫌気、ほどほどの期待または諦め……
すべて人間を深く、陰りのある、いい味と香のする存在にする。
そのような人は、人間の分際を知った判断をするからである。

しかし現代には、そのほどほどの悪を
自分にも他人にも決して認めない自称ヒューマニストがいる。
そういう人たちは、現代の日本で、人が享受する
すべての便利を同じように受けながら、発電所の建設には反対し、
日本のジャーナリズムで発言することで金を得ながら、
紙の原料である森を切ることには反対だ、と言うのである。

生きるということは、これまたほどほどに人を困らせることでもある。
ほどほどに大地を汚し、森を荒らし、水と空気を汚染し、
ほどほどに他人の受ける便利や幸福の分け前を、力で収奪することである。
その疚(やま)しさをほどほどに減らそうとする時、
初めて人間は少し人のことを考える行動を取れる。


ーーーーーーーーーー


私が生涯「仲よし」にならなかった人種は、
自分が人道的に正しいことをしている、と思っている人たちであった。
「一人の人間の命は地球よりも重いじゃない」と片方で言いながら、
「産む産まないは女の自由よ」と言うのは論理に矛盾があるのに、
そう言って自己肯定をした人たちである。
そういう辻褄の合わない人とは、
どう付き合って行ったらいいかよくわからなかったのである。
胎児は中絶しない限り、そのほとんどは生き続けるれっきとした命で、
しかも抗議も署名運動も反対のデモもできない
もっとも弱い存在だということは明白なのだから、
もし一人の人間の存在が地球よりも重いならば、
胎児を中絶するなどということはもってのほかだ。
胎児は無抵抗の存在だが、れっきとして生命そのものであり、
その弱者を勝手に「間引く」という思想は戦慄すべきことだろう。

しかし「人間は、自分を生かすためには、
子供だって見殺しにすることもありますよね」と言う人とは、私は親友になれた。
自分の中にある矛盾した要素を承認した人である。


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この本は、平成11年に発行されたものですが、
それまでに曽野綾子さんが書かれた小説やエッセイ、寄稿などから、
ご自身でまとめられたたくさんの言葉が載っています。

まえがきからも、少しご紹介します。

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ここ数年、私はときどき居心地が悪いことがあった。

世間の多くの人が、人道主義を声高らかに唱えて大合唱をする。
自然保護、原発反対、ダム反対、日本の戦争責任追及。

しかし私はほとんどどれにもはっきりした確信をもてない。
私は畑が好きだから、たぶん自然愛好の心はあると思うのだが、
同時にマラリアを防ぐためには、原生林を少なくとも
自分の家の周囲では切らなきゃとうてい住めたもんじゃないのになぁ、
などと考えている。

私は、自分がかなり狡(ずる)くてよくない人間なのだ、
とますますはっきり自覚するようになった。

しかし、いい人をやめたのはかなり前からだ。
理由は単純で、いい人をやっていると疲れることを知っていたからである。
それに対して、悪い人だという評判は、容易に覆らないから安定がいい。
いい人はちょっとそうではない面を見せるだけですぐ批判され、
評価が変わり、棄てられるからかわいそうだ。


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皆さんは、これらの言葉をご覧になって、どのようにお感じになったでしょうか。
たしかに「いい人」を続けるってことは、本当に大変ですよね。(汗)
すべての人に受け入れられるなんてことは、すべての人の価値観が一致しない限り
あり得ないことですし、それは「人」に限らず、「組織」「国」なども同様。

さらに、もう少しご紹介したい箇所がありましたので、それはまた明日。




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Last Modified : 2015-04-13