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2017-10-06 (Fri) 09:00

想い人

前回からご紹介し始めたあちらの本の中に、
私が大学の卒論に選んだ作家について書かれていた個所があり、
ついつい嬉しくなったので、ご紹介しますね。

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第三章 自問自答の中で

○「年寄り冥加」の真実
学問として書かれる政治や経済は、
なんといっても体系立てることが第一義となるから、
その時代を築き上げた思想なり人物なりに光をあて、
これでよかったのだ、こうするほかに仕方なかったのだという筋道が立てられる。
小説の方もご同様で、上杉謙信の信心深さだの、
武田信玄の知略だのに焦点があてられ、戦国時代といえば武将の生き方、
幕末維新といえば戦に勝った男たちの勇気と決断、そんな相場にきまっている。
しかし、武将たちに戦をされるたびに迷惑した百姓町人のことはどうなのか。
それを書いたのが、山本周五郎氏である。
「慶長五年の何月何日に、大阪城でどういうことがあったか、ということではなくて、
 そのときに道修町のある商家の丁稚がどういう悲しい思いをしたのか。
 その悲しい思いの中から、彼がどういうことをしようとしたか
ということを探究するのが文学の仕事だ」
「政治にかまって貰えない、道徳法律にもかまって貰えない最も数の多い人たちが、
 自分たちの力で生きていかねばならぬ、幸福を見つけ出さねばならない」
だから私はこの作家が好きなのである。
私ばかりではなく、たとえば山本氏の代表作『さぶ』『虚空遍歴』を
ニューヨークに住みながら何回となく読み返している人がいる。
アメリカ人のなかにも「さぶ」みたいな人物がいて、
お人善しのために何回も人に裏切られながら人間不信に陥ることもなく、
自分の力で人生を切り開いてゆくタイプにお目にかかるという。
(略)

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私が高校生のころ、大学の卒論にしようと思っていたのが『さぶ』。
ところが、周五郎の作品を読めば読むほど、
周五郎が作品を通して一貫して読者に伝えたいことがあるように思えてきて、
結局、作品研究ではなく、作家研究になりました。

山本周五郎という作家、皆さんご存知でしょうか。
長編作品よりも、珠玉の短編を数多く残した作家で、
「大衆文学」と評されることが多いのですが、私はそうは思いません。

私が最初に感動に打ち震えたのが、本文中にも登場していた『さぶ』。
これは割と長くしっかりとした作品ですが、本当に素晴らしいです。
他に私が好きなのは、『ちゃん』と『かあちゃん』の2作品。
これらの作品は、市井に生きる人たちの日常を描いていて、
本当に泣けてくる、心温まる素晴らしい作品です。
他にも、「水の下の石」とか「ちくしょう谷」とか、
お勧めしたい作品が山ほどあるのですが…。

藤沢周平氏の作品も素晴らしいとは思いますが、
是非是非機会がありましたら、山本周五郎の作品も読んでみて下さいませ。
そうすれば、なぜ「山本氏の代表作『さぶ』『虚空遍歴』を
ニューヨークに住みながら何回となく読み返している人がいる」のか
お分かりいただけるのではないかと思います。




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Last Modified : 2017-10-16